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最期の航海

「世界一周のエピソードもっと聞かせてよ。なんかあるでしょ」
男の言葉に女は考えるそぶりを見せた後、話しはじめた。

「末期がんのおじいさんが乗ってきたのよ」
女は看護婦として世界一周遊覧の船に乗船していた。
ラクな仕事と思ったら、休む暇もない忙しさにすぐに逃げ出したくなったという。
老人が多かったのだ。半数以上を占めていた。
平気で夜中の3時に解熱剤を求め船内電話を入れる老人・・・・熱が下がらないと寄港地への上陸許可が下りないのだ。
女は「15万円の給料じゃ割に合わないわ」と嘆いた。
世界一周の三ヶ月間、1000人の乗客の医療を、医師と看護婦のたった二人で診ることになった。

「でね。そのおじいさんに船長が降りろて言うの。船長知らなかったのよ。末期がんの患者が乗ることを」
車椅子の老人と介護の老婦人を乗せた船はすでに航路に就いていた。
女は憤慨する。
「そんなこっとってある!?もう乗っちゃってるんだよ。それを降りろって!」
男は黙って聞いていた。
「それでさあ、結局おじいさん、シンガポールで降ろされちゃたの。船長の命令で・・・・。おじいさん可愛そうだったなあ。船に乗って来たときは目がキラキラしてたの。希望に満ちた、て感じで。でも船長に『降りろ』て言われてからガックリ来ちゃって生気が無くなるって感じ?そんな感じになっちゃった」

男が口を開いた。
「おじいさんはシンガポールから別の船で日本に帰ったんだ?」
「いいや。ちがうよう!そんな体力ないもん。シンガポールでそのまま亡くなったんだよ!」
男の声のトーンが高くなった。
「えっ!?死んじゃったの!?シンガポールで?」
「うん、そうだよ」
すると、男はせきを切ったように笑いはじめた。
「はははははは。し、死んだんだ。シンガポールで。船長に出てけて言われて。しょぼんてなって。うははははははは」
笑いの止まらなくなった男をぽかんと女は眺めていた。
「わはははははは。末期がんで船に乗って・・・・。あははははは。死んだんだ。訳のわからん土地で。あははは。馬鹿だ。ちゃんと確認しなかったからだ。わははははははははは。第一、末期がんで専属の医者もなしに船旅に出れる訳がない。はははははははは。そりゃ船長『降りろ』て言うしかない。死にかけてるから。わははははははは。うはははははははは。うはははは」
男の頭の中では、希望に満ちて乗船したときの老人と、船を降りざるをえなくなり憔悴しきった老人とが交錯していた。

男は女の前で笑い続けた。





最期の航海_f0192814_0445398.jpg





オリンパスE-P1、触りました。
フォーカス遅かった。割りとデカかった。
やっぱりオリンパスです。わが道を逝く、でした。
人気の名機PENをモチーフにデザインしたものの、
「誰も知らない一眼のほうのPENだった」という猛烈なオチも笑えます。
ピントのズレた天才集団・・・・そんなところ好きです。
使えないけど。

2位目指してます。
クリックお願いします<(_ _)>

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by photobra7 | 2009-07-04 00:46 | コクる | Comments(6)
Commented by tes_music_system at 2009-07-04 07:07
3位だあ!
Commented at 2009-07-04 15:16
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by photobra7 at 2009-07-04 21:06
>親分
ありがとう!
Commented by photobra7 at 2009-07-04 21:07
>鍵さん
応援ありがとう。
1位はムリッすw
Commented by manabu at 2009-07-09 21:23 x
この話、ブラちゃんが作った話?
良いストーリーだ!
Commented by photobra7 at 2009-07-09 22:17
>マナブさん
実話です。

>良いストーリーだ!
うれしいなあ。
コメントないので、このブラックユーモア失敗かなあ、と軽く落ち込んでましたw
アーヴィングのブラック短編に負けんぞ、て気持ちがきっかけで書きました(爆
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